書籍レビュー

「ゲームデザイン脳 ―桝田省治の発想とワザ―」感想 7/11

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「着想を企画書に落とす その2 - リンダキューブ」の部より

頭を抱えた最初の難題は、「モンスターを能動的に探して狩る、捕まえる」という面白さ、つまりこのゲームの根本的なテーマをユーザーにどう伝えるかだった。
なにしろリンダを企画していた当時(1990年頃)には、「モンスターを能動的に探して狩る、捕まえる」という面白さを誰も体験したことがなかったのだ。
今なら「ポケモンみたいに」の一言で、たいていのゲーマーには説明は不要だろう。
だが、ポケモンはまだ影も形もない。
ちなみにリンダの発売は1995年、ポケモンの発売はその翌年の1996年になる。
想像できるだろうか、「ポケモンみたいに」という言葉で説明できない未知の概念を既存の言葉で伝える苦労を。

結局いいアイデアは出なかった。
代わりにモンスターを狩り捕まえることがなぜ心躍る冒険になるのか、その理由づけを考えることにした。
とりあえずその理由が共感されれば、具体的な面白さが想像できなくてもゲームを始める動機にはなると思ったからだ。
そこで、当時話題になっていた1999年に恐怖の大魔王という彗星が地球に衝突するという巷説(ノストラダムスの大予言)を安直にくっつけ、宇宙の彼方の絵空事としてごまかすことにした。
そして、でっちあげたのが「数年後に巨大隕石が衝突し壊滅する惑星から、宇宙船「箱舟に惑星に棲息する動物をできるだけたくさん乗せて脱出する」という荒唐無稽な設定だ。

動物を狩る、捕まえる面白さを具現化するために新しく考案したシステム(罠を仕掛ける、エサでおびき寄せる、卵をかえす、追跡する、有利な地形で戦う、備や食料を自作する等など)があまりに多様で初心者が遊ぶための敷居が高すぎる。
制作スタッフからそんな指摘を受けた。

そこで、本編とは別に練習用の短いシナリオを用意することにした。
この練習用シナリオは、これまでのRPG同様にシナリオがメインで、それを追っていく過程で、プレイヤーに狩りの技術を覚えてもらい、その後に本番。
そういう構成だ。

ただし、練習用のシナリオのためにグラフィックデータの作成量が増えては制作費も増える。
それは避けたい。
そこで、登場人物、マップ、モンスターなどを複数のシナリオで流用することにした。
その条件を満たすシナリオ構造はパラレルワールドである。
つまり同じ世界、同じ登場人物を使ってのifの物語だ。

その後、練習用のシナリオ1つでは、まだシステム理解の敷居が高いとの意見を受け、練習用のシナリオの前にもっと難度の低いシナリオを追加し、シナリオは合計3編となった。
ちなみに移植版である「リンダキューブアゲイン」(プレイステーション)以降は、本番シナリオのあとに超難度の隠しシナリオをさらに追加し、シナリオの総数は4編になっている。
この時点でようやくタイトルも決定。
狩りという伝わりにくいセールスポイントはあきらめ、美少女、リンダ」+シナリオ「3編というわかりやすいセールスポイントをそのまま活かし「リンダキューブ(Linda)」とした。

本節を読むと、さまざまな人の意見に左右され、企画の落としどころがフラフラと動いているように見えただろう。
主体性がないように感じたかもしれない。
だが、「モンスターを能動的に探して狩る、捕まえる」というゲームの幹となる面白さは、揺らいでいないという点に注目してほしい。

斬新なシステムをプレイヤーに受け入れられる工夫への苦労が語られています。
説明が必要な時点で、プレイヤーには受け入れてもらえないでしょう。
そして、斬新なシステムであるがゆえに、チュートリアルとは思わせない方策として複数シナリオという形式を採用。
最近RPGアツマールで見た「ガチャで人生を吹き飛ばす~」のステージ構成を思い出しました。
あのゲームって戦闘はほぼツクールデフォルトなんだけど、強くなるには戦ってレベルを上げるんじゃなくてガチャを回しまくるという事を理解しないと進まないんですよね(笑)
雑魚戦の意味ってほとんどないんだなって2つくらいステージクリアして理解しました。

なので、新しい要素を追加したい時は、段階的にゲームに入ってくるように構成するのも1つの手段なのだと学習しました。

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